良い映画、という評判をよく聞いたので見てみました。「バベル」と比較されることも多いようですが、個人的にはこちらの「クラッシュ」の方が好きです。強烈な場面が無かったので、見やすかったのがその理由…。

人種のるつぼで資本主義国家であるアメリカにはさまざまな人が存在します。白人、黒人、ヒスパニック、アジア系、アラブ系、そして富裕層、貧困層。所得格差は日本の比ではありません。住むところも人種や所得で分かれていたりします。普段は棲み分けができているこれらの異なる人々ですが、ちょっとしたことでお互いへの憎悪がぶつかり合います。時にそれは命をも奪い合う結末をもたらします。

映画の中に出てくる、数々の聞くに堪えないののしりや侮辱の言葉。精神が健康なときでないと、本当に耐えられないかもしれません。
「何でそんな嫌なこと言うのかな」と何回も思いましたが、それぞれの人々にそれぞれの背景があって、結局は彼らの背負う不幸やストレスといったものが根元にあるのです。
差別や貧富の差がこの世から無くなるなんてことはあり得ないし、全ての人が幸せになるなんてことも到底考えられません。むしろ、9.11以降、他人種への憎悪は広がるばかりです。
でも、この映画の中のそれぞれのエピソードで見せられる"救い"が、必ずお互いに歩み寄ることができるのだというメッセージを提示しているように思えました。

いちばん印象に残ったのは、グラハムとフラナガンの会話。白人のフラナガンが黒人のグラハムを相手に自分の黒人に対するイメージとか考えを話すのですが、この二人の会話は深い意味を持っていると思います。セリフの一つ一つについて、考えさせられました。
フラナガンの主張は、彼のセリフから推測するに、「グラハムのように優秀でちゃんとした職に就いている黒人もいる一方で、犯罪に手を染める黒人が多くいる。自分たち白人はもう十分に黒人たちに権利や機会を与えているのだから、あとはそっちの問題だ」こういったことだと思います。
でも、黒人たちの方は、冒頭の会話にあるように、「あのウエイトレス、俺たちが黒人でチップを払わないと思ってちゃんとサービスをしなかった。だから、俺はチップを払わなかったんだ」こんな悪循環をグルグルとまわっているのです。
この永遠にまじわらないと思われる平行線を描く二つの意見。アメリカの抱える人種差別問題は本当に根が深いのだと感じました。